
この記事でわかること
- メールが届かない・送信できないときに、まず確認すべき「メッセージ追跡」の使い方
- 配信状態(ステータス)の意味と読み方
- 90日より前のメールを調べる方法
Exchange Online のメールボックスを Outlook や Outlook on the web で利用していて、「メールが送信できない」「相手からのメールが届かない」というトラブルに直面したことはありませんか?
まず確認すべきは、送信者に返される配信不能通知(NDR)のエラー内容です。配信不能通知とは、メールが正常に届かなかった場合に送信者へ返される、エラー内容が記載されたメールのことです。
ただし、NDRが返されない場合や、送信者側でエラーの有無を確認できない場合もあります。そんなときに管理者が使うのが、今回紹介する「メッセージ追跡(メッセージトレース)」です。ログを確認することで、エラーの内容や、メールが正常に配信されているかどうかを調べることができます。
以前の「メッセージ追跡(クラシック)」は2025年9月1日に廃止され、現在は「新しいメッセージ追跡」に完全移行しています。画面の名称や手順が変わっているため、古い情報のまま操作すると迷ってしまいます。この記事では最新のUIに基づいて手順を解説します。
メッセージ追跡でわかること
メールを送信・受信したはずなのに、ログに記録が見つからないケースがあります。この場合、受信シナリオであれば「そもそも Exchange Online にメールが到達していない」ことを示しています。つまり Exchange Online 自体の問題というより、送信元や Exchange Online に到達するまでの経路上で問題が発生している可能性が高いということです。
Exchange Online のフィルタリングには「ブロックリスト」と「IPスロットリング」という機能があります。これらによってブロックされたメールは、メッセージ追跡のログにも記録されないため注意してください。
送信シナリオでは、Outlook on the web は Exchange Online から直接送信される仕組みのため、ログが記録されないケースはほとんどありません。一方 Outlook(デスクトップ版クライアント)は、クライアントから Exchange Online へ接続してから送信するため、接続がうまくいかなかった場合はログが残らないことがあります。この場合は、Outlook クライアント側の設定・通信環境の問題であることが多いです。
配信状態(ステータス)の一覧
配信状況は、検索結果の「状態」欄に記録されるステータスから確認できます。主なステータスは以下のとおりです。
| ステータス | 意味 |
|---|---|
| 配信済み(Delivered) | メッセージが目的の宛先に正常に配信された |
| 失敗(Failed) | メッセージの配信に失敗した |
| 保留中(Pending) | 配信が試行中、または再試行されている |
| 展開(Expanded) | 配布グループの各メンバーへ展開して配信された |
| 検疫済み(Quarantined) | スパムや不審なメールとして検疫に格納された |
| スパムとしてフィルター処理(FilteredAsSpam) | スパムと判定され拒否/ブロックされた(検疫ではない) |
| 呼び出し(Recalled) | 送信者によってメッセージの取り消し(リコール)が行われた |
| 状態の取得(Getting status) | 受信は完了しているが、他の状態情報がまだ反映されていない(数分待って再確認) |
※「検疫済み」「スパムとしてフィルター処理」「状態の取得」は、直近10日以内の検索でのみ利用できる値です。
なお、メッセージの詳細画面では上記のほかに「解決済み(Resolved:転送先アドレスへリダイレクトされた)」「転送(Redirected)」「延期(Deferred)」など、配信の過程で発生したイベントも確認できます。
メッセージ追跡の手順
ここからは、実際にメールを追跡する手順を、現在の「新しいメッセージ追跡」のUIに沿って解説します。
- 管理者権限(Exchange 管理者、または Organization Management ロールなど)を持つアカウントで Microsoft 365 にサインインします。
- Exchange 管理センター(https://admin.exchange.microsoft.com)にアクセスします。
左メニューの [メール フロー] > [メッセージ追跡] をクリックするか、直接https://admin.exchange.microsoft.com/#/messagetraceにアクセスしても開けます。 - [メッセージ追跡] ページ上の [追跡の開始] をクリックし、新しいトレースを作成します。
- ポップアップで [送信者] [受信者] を指定します(空欄のままなら全件が対象)。外部アドレスも入力可能で、
*@contoso.comのようなワイルドカードにも対応しています。 - [時間範囲] を指定します。既定は直近2日間ですが、最大90日前まで指定できます。ただし、その場ですぐに結果を確認できるのは「10日以内」の範囲のみです。10日を超える範囲を指定すると、ダウンロード形式のレポートに切り替わります(下記「レポートの種類」参照)。
- 必要に応じて [詳細な検索オプション] を開き、配信状態・件名・メッセージID・方向(送信/受信)・送信元IPアドレスなどで絞り込みます。
- [レポートの種類] を選択します。
- 10日以内で素早く確認したいだけなら「要約レポート」
- 方向や送信元IPなど、もう少し詳しい情報が欲しい、または10日を超える期間を調べたい場合は「拡張サマリー レポート」
- ルーティングの詳細やメッセージイベントまで含めた詳細な調査をしたい場合は「拡張レポート」
- [検索] をクリックします。
- 要約レポートの場合は、そのまま [メッセージ トレースの検索結果] ページに結果が表示されます。行をクリックすると詳細情報(メッセージイベント・送信元/宛先IPなど)が確認できます。
- 拡張サマリー レポート/拡張レポートの場合は、CSVファイルとして準備されます。準備には数時間かかることがあるため、[ダウンロード可能なレポート] タブから状態が「完了」になったことを確認し、CSVをダウンロードします。
結果を全件エクスポートしたい場合は、検索結果画面の [結果のエクスポート] からCSVファイルとして出力できます。
レポートの種類と違い
レポートの種類によって、取得できる情報量や結果件数の上限、取得までの速さが異なります。目的に応じて使い分けましょう。
| レポートの種類 | 取得できる情報 | 結果件数の上限 | 表示方法 |
|---|---|---|---|
| 要約レポート | 日付・送信者・受信者・件名・状態 | 最大20,000件 | 検索後すぐ画面表示 |
| 拡張サマリー レポート | 概要レポートの内容+方向・送信元IPなど | 最大100,000件 | CSVダウンロード(準備に数時間) |
| 拡張レポート | 拡張サマリーの内容+詳細なルーティング/イベント情報 | 最大1,000件 | CSVダウンロード(準備に数時間) |
※拡張サマリー レポート・拡張レポートは、時間範囲にかかわらず「送信者」「受信者」「メッセージID」のいずれか1つ以上の条件指定が必須です。
包括的レポートについては、以下の記事もご参照ください。
90日より前のメールを調べたい場合
メッセージ トレースで確認できるのは、あくまで過去90日以内のデータです。それより古いメールの配信状況を確認することはできません。
また、大量のメール(1,000件超の受信者に送信されたメールなど)を調べる場合や、10日を超える範囲を自動化して取得したい場合は、PowerShellの新しいコマンドレット Get-MessageTraceV2 / Get-MessageTraceDetailV2 が便利です。旧コマンドレットの Get-MessageTrace は新しいメッセージ トレースの廃止に伴い順次利用できなくなっているため、これから自動化スクリプトを組む場合は必ず新しいコマンドレットを使用してください。
よくある質問
Q. 検索してもメールがログに出てきません。なぜですか?
A. ブロックリストやIPスロットリングでブロックされたメールは、そもそもログに記録されません。また、送信元から Exchange Online まで到達していない場合(DNS設定や送信側のメールサーバーの問題など)もログには残りません。
Q. どのロールがあれば操作できますか?
A. 最低限「Organization Management」ロール グループのメンバーシップ、またはExchange管理者ロールが必要です。Microsoftは、必要以上に強い権限(グローバル管理者など)を日常的に使わないことを推奨しています。
まとめ
メッセージ追跡は、Exchange Online でのメール送受信トラブルを切り分けるための最も基本的な調査ツールです。まずは以下の流れを押さえておきましょう。
- NDR(配信不能通知)の内容を確認
- NDRがない/確認できない場合はメッセージ トレースでログを確認
- 10日以内なら概要レポート、それ以上や詳細情報が必要なら拡張(サマリー)レポート
送信・受信のトラブルが起きたときは、まずログからトラブルシューティングをしてみましょう。