
この記事でわかること
- インプレースアーカイブにアイテムが移動しない、考えられる4つの原因
- それぞれの原因を切り分けるPowerShellコマンド
- アーカイブメールボックスの容量に関する最新の仕様(自動拡張アーカイブ)
インプレースアーカイブ(オンラインアーカイブ)を有効にすると、管理フォルダーアシスタントが動作したタイミングで、アイテム保持ポリシーの[Default 2 year move to archive]タグにより、受信日から2年経過したアイテムがプライマリメールボックスからアーカイブメールボックスへ自動的に移動されます。
あわせて[Recoverable Items 14 days move to archive]タグの動作により、プライマリメールボックスの回復可能なアイテム領域に格納されたアイテムも、14日経過後にアーカイブメールボックスの回復可能なアイテム領域へ自動的に移動されます。
この記事では、本来アーカイブメールボックスに移動するはずのアイテムが移動しない場合に考えられる原因を、確認方法とあわせて順番にご紹介します。
- この記事でわかること
- 原因① 管理フォルダアシスタントが動作していない
- 原因② RetentionHoldEnabledがTrueになっている
- 原因③ アーカイブメールボックスの容量が上限に達している
- 原因④ フォルダのアイテム数が上限に達している
- よくある質問
- まとめ
原因① 管理フォルダアシスタントが動作していない
アイテム保持ポリシーの処理は、管理フォルダアシスタント(Managed Folder Assistant)が動作したタイミングで行われます。この処理には最大で7日かかる場合があります。
・メールボックスの容量が10MB以下の場合、管理フォルダアシスタントが自動的に動作しないため、10MBを超えるまではアーカイブに移動されません。
・アイテム保持ポリシーを変更した場合(保持タグの追加、フォルダへの個人タグ設定など)も、反映には管理フォルダアシスタントの動作を待つ必要があるため、設定後最大7日かかることがあります。
PowerShellのコマンドレットで手動で走査させることができるので、まずは以下のコマンドで移動が行われるか確認してみましょう。あらかじめ Exchange Online PowerShell に接続してから実行してください。
<構文>Start-ManagedFolderAssistant -Identity <対象のメールアドレス>
<実行例>Start-ManagedFolderAssistant -Identity User001@contoso.com
※反映までお時間がかかる場合があります。1回の実行ではアイテムが処理されないこともあるため、数回実行してみてください。
原因② RetentionHoldEnabledがTrueになっている
RetentionHoldEnabled は、アイテム保持ポリシーによる自動処理を一時停止するかどうかを定める設定値です。この値が有効(True)になっていると、アイテム保持ポリシーによるメールボックス内アイテムの自動削除・自動移動が行われなくなります。既定では無効(False)です。
RetentionHoldEnabled がTrueになる代表的なケースとして、以下の2つがあります。
- 管理者や自動化スクリプトなどにより明示的に設定変更された
- ネットワークアップロードを使用してPSTファイルをMicrosoft 365にインポートした
Microsoft 365 のインポートサービスは、PSTファイルのインポート後、アイテム保持ホールドを自動的に(無期限に)オンにする仕様です。これは RetentionHoldEnabled プロパティがTrueに設定されるためで、これによりメールボックスに割り当てられたアイテム保持ポリシーの処理が行われなくなり、インポート直後のメッセージが誤って削除・アーカイブされることを防いでいます。
以下の手順で、事象が発生しているユーザーの RetentionHoldEnabled をFalseに変更し、管理フォルダアシスタントを実行することで解消するか確認してみてください(Exchange Online PowerShellに接続してから実行してください)。
RetentionHoldEnabledの値を確認する
Get-Mailbox -Identity "対象ユーザーアドレス" | Select RetentionHoldEnabled
個別にRetentionHoldEnabledをFalseにする
Set-Mailbox -Identity "対象ユーザーアドレス" -RetentionHoldEnabled $False
※Trueの場合はアイテム保持ポリシーによる処理が停止し、Falseにすることで処理が再開されます。保持ホールドは、ユーザーが休暇中や一時的に不在の場合などを想定した機能です。
原因③ アーカイブメールボックスの容量が上限に達している
アーカイブメールボックスにも容量の上限があります。容量が上限に達している場合、アイテムの移動が制限されるため、不要なアイテムを削除するか、容量を拡張する必要があります。
以前は「Plan1は50GB、Plan2は100GBが上限」とだけ案内されることが多かったのですが、現在は自動拡張アーカイブを有効化することで、アーカイブメールボックスの容量を最大1.5TBまで拡張できます。Exchange Online Plan 2、または Exchange Online Plan 1 + Exchange Online Archiving のライセンスであれば利用可能です。「容量が100GBで頭打ちになっている」ように見える場合は、まず自動拡張アーカイブが有効になっているかを確認してください。
| ライセンス | 通常メールボックス | アーカイブメールボックス |
|---|---|---|
| Exchange Online Plan 1 | 50GB | 50GB(自動拡張なし) |
| Exchange Online Plan 1 + Exchange Online Archiving | 50GB | 100GB(自動拡張有効化で最大1.5TB) |
| Exchange Online Plan 2 | 100GB | 100GB(自動拡張有効化で最大1.5TB) |
※自動拡張アーカイブはExchange 管理センターからは有効化できず、PowerShellでの設定が必要です。既定でオフになっている場合があるため、あわせて確認してください。
アーカイブメールボックスの利用容量を確認するコマンドレット
<構文>
Get-MailboxStatistics -Identity <メールアドレス> -Archive | Select TotalItemSize,ItemCount,TotalDeletedItemSize,DeletedItemCount | Export-Csv -Encoding UTF8 -NoTypeInformation -Path <ファイルパス\ファイル名>.csv
<実行例>
Get-MailboxStatistics -Identity test@contoso.com -Archive | Select TotalItemSize,ItemCount,TotalDeletedItemSize,DeletedItemCount | Export-Csv -Encoding UTF8 -NoTypeInformation -Path "C:\Temp\Get-MailboxStatistics.csv"
実行結果の見方
TotalItemSize: アーカイブメールボックスの使用容量ItemCount: アーカイブメールボックス全体のアイテム数TotalDeletedItemSize: アーカイブの回復可能なアイテム領域の使用容量DeletedItemCount: アーカイブの回復可能なアイテム領域のアイテム数
原因④ フォルダのアイテム数が上限に達している
容量が上限に達していない場合でも、フォルダ単位のアイテム数には以下の上限があり、これを超えているとアイテムが移動できません。
- メールボックスフォルダーごとの最大メッセージ数: 100万
- 回復可能なアイテムフォルダー内のフォルダーごとの最大メッセージ数: 300万
フォルダのアイテム数を確認する方法
<実行例>
Get-MailboxFolderStatistics Mailbox001@contoso.com -Archive | Select Name,FolderSize,ItemsInFolder | Export-CSV -Encoding UTF8 -NoTypeInformation -Path "C:\Temp\ArchiveFolder.csv"
※実行例ではCドライブのTempフォルダーに情報が出力されます。適宜ファイル名を変更してください。
実行結果の見方
Name: フォルダーの名称FolderSize: フォルダーに格納されているアイテムの容量ItemsInFolder: フォルダーに格納されているアイテムの数
なお、特定のフォルダだけアイテムが移動しない場合は、そのフォルダに「アーカイブに移動しない」個人タグが設定されている可能性があります。また、特定のアイテムだけ移動しない場合は、そのアイテムの容量が150MBを超えている可能性も考えられます。
よくある質問
Q. 原因①〜④のどれから確認すればいいですか?
A. まずは即座に確認・実行できる原因①(管理フォルダアシスタントの手動実行)から試すのがおすすめです。それでも改善しない場合は原因②(RetentionHoldEnabled)、容量に心当たりがある場合は原因③、特定のフォルダ・アイテムだけ症状がある場合は原因④を疑うと効率的です。
Q. Plan2なのにアーカイブ容量が100GBで止まっているように見えます。
A. Plan2にはアーカイブの自動拡張機能が用意されていますが、自動拡張アーカイブそのものは既定でオンになっていない場合があります。PowerShellで有効化状況を確認し、無効であれば有効化することで、最大1.5TBまで拡張できます。
Q. PSTファイルをインポートした覚えがないのに、RetentionHoldEnabledがTrueになっていました。
A. 過去にネットワークアップロードでPSTファイルをインポートした場合、その時点で自動的にTrueへ変更される仕様です。担当者の引き継ぎなどで経緯が分からなくなっているケースもあるため、心当たりがなくても一度値を確認してみることをおすすめします。
まとめ
アーカイブメールボックスにアイテムが移動しない場合は、以下の順番で切り分けると効率的です。
- 管理フォルダアシスタントを手動実行して反映を待つ(最大7日かかる場合あり)
RetentionHoldEnabledがTrueになっていないか確認する- アーカイブメールボックスの容量を確認し、必要であれば自動拡張アーカイブ(最大1.5TB)を有効化する
- フォルダ単位のアイテム数上限(100万/300万)や、150MBを超える大容量アイテムがないか確認する
特に③の容量上限については、自動拡張アーカイブを使うことで大幅に緩和できるため、「容量が原因でアーカイブが止まっている」と思ったら、まず自動拡張アーカイブの有効化状況を確認してみてください。