- 回復可能なアイテム領域の容量を確認するコマンドレット
- 対処法 1. インプレースアーカイブ 機能について
- 対処法 2. 自動拡張アーカイブを有効化する
- 特定のユーザーの自動拡張アーカイブを有効化する
- 対処法 3. 回復可能なアイテム領域のアイテムを完全削除する
回復可能なアイテム領域の容量が上限に達した場合の影響について、以下の内容を確認してます。
- メールアイテムが削除できなくなる。
- 会議出席依頼の変更など、回復可能なアイテム領域の [Calendar Logging] にアイテムが格納されるため、予定表の変更やキャンセルができなくなる。
- メールボックス監査ログは、回復可能なアイテム領域の [Audits] に格納されるため、メールボックス監査ログが記録されなくなる。
なお、既定の動作では、削除済みアイテムから削除したアイテムは回復可能なアイテム領域に移動し、14 日経過後に完全削除される動作ですが、訴訟ホールドや Microsoft Purview (Microsoft 365 コンプライアンス) のアイテム保持ポリシーなどの保持機能を有効化している場合は、回復可能なアイテム領域に保持期間まで残り続けます。
そのため、保持機能を無期限にしている場合は、削除したアイテムが無期限で残り続けるため、回復可能なアイテム領域の容量がいずれ上限に達してしまいます。
それを回避するには、保持期間を有期限(1年など)にすることで一定期間経過後に削除されるため、回避することが可能です。
保持期間を 1 年に設定している場合は、受信日を起算日として 1 年経過後に回復可能なアイテム領域から削除される動作となります。
また、回復可能なアイテム領域の容量のひっ迫を回避するには、インプレースアーカイブの機能がありますので、ご紹介したいと思います。
なお、回復可能なアイテム領域の利用容量を確認する場合は以下のコマンドレットで可能です。
回復可能なアイテム領域の容量を確認するコマンドレット
Get-MailboxStatistics -Identity "ユーザーのアドレス" | Select TotalDeletedItemSize
※ TotalDeletedItemSize が 100 GB であるかご確認ください。
対処法 1. インプレースアーカイブ 機能について
インプレースアーカイブを有効にすることにより、プライマリメールボックスとは別にアーカイブメールボックスが作成されるため、アーカイブメールボックス側にメールアイテムを移動させることで、プライマリメールボックスの容量を逼迫せずに利用いただくことが可能です。
また、アイテム保持ポリシーを使用し、自動的にアイテムをアーカイブメールボックスに移動する動作です。
インプレースアーカイブを有効にした場合、管理フォルダーアシスタントが動作したタイミングでアイテム保持ポリシーの[Default 2 year move to archive] の既定タグにより、受信日を起算日として 2 年経過しているアイテムが、プライマリ メールボックスからアーカイブ メールボックスへ自動的に移動される動作です。
あわせて、回復可能なアイテム領域のアイテムは、既定で 14 日経過後にアーカイブメールボックスの回復可能なアイテム領域に移動します。
なお、Outlook クライアントではアーカイブメールボックスは [オンラインアーカイブ-<アドレス>] と表示され、Outlook on the web では、[インプレース アーカイブ-表示名] と表示され、そこからメールを閲覧することができます。
Outlook クライアント利用時の留意点
インプレースアーカイブを Outlook クライアントにて利用する場合、Exchange (MAPI) 接続でのみ利用が可能です。
POP または IMAP 接続ではアーカイブのメールを閲覧することができません。
また、Outlook クライアントご利用の場合、インプレースアーカイブをサポートしていないバージョンでは、アーカイブメールボックスが表示されませんので、以下の公開情報にて要件を満たしているバージョンであるかご確認ください。
※ [インプレースアーカイブ] 列をご参照ください。"●" が付いているライセンスがご利用可能です。
Outlook クライアントのエディションの確認方法
- Outlook クライアントを起動します。
- 画面左上の [ファイル] をクリックします。
- 左ペインの [Office アカウント] をクリックします。
- 画面右側に製品情報が表示されます
Exchange Online のメールボックス容量
アーカイブメールボックスで利用できる容量は、ライセンスにより異なります。
----------------------------------------
・ Exchange Online プラン 1 が含まれるライセンス (Office 365 Enterprise E1 等)
----------------------------------------
通常メールボックス : 50GB
通常メールボックス用回復可能領域 : 30GB
インプレース アーカイブ : 50GB
インプレース アーカイブ用回復可能領域 : 30GB
※ 上記容量は格納可能な最大量でございます。
----------------------------------------
・ Exchange Online プラン 2 が含まれるライセンス (Office 365 Enterprise E3 や E5)
・ Exchange Online プラン 1 が含まれるライセンス+ Exchange Online Archiving for Exchange Online
----------------------------------------
通常メールボックス : プラン 1 → 50GB、プラン 2 → 100GB、
通常メールボックス用回復可能領域 : 100GB
インプレース アーカイブ : 100GB
インプレース アーカイブ用回復可能領域 : 100GB
※ 通常メールボックス用 [回復可能領域] につきましては、訴訟ホールドなどの保持設定が有効な場合 100 GB となり、保持設定が無効な場合 30 GB となります。
※ 自動拡張アーカイブを有効化している場合は、通常領域と回復可能なアイテム領域を合わせて、1.5TBまで拡張が可能です。
以下にインプレースアーカイブを有効化する手順をご案内します。
インプレースアーカイブを有効化する手順
- 管理者にて Exchange 管理センターへサインインします。
- [Exchange] 管理センターの [受信者] - [メールボックス] を開きます。
- インプレースアーカイブを有効化するユーザーを選択します。
- [メールボックスアーカイブの管理] をクリックします。
- [メールボックスアーカイブ] をオンに変更します。
- [保存] をクリックします。
また、既にインプレースアーカイブを有効化しており、アーカイブメールボックスの回復可能なアイテム領域もひっ迫している場合は、自動拡張アーカイブの機能がありますので、ご紹介したいと思います。
対処法 2. 自動拡張アーカイブを有効化する
自動拡張アーカイブを有効化することで、既定では、アーカイブメールボックスの通常領域と回復可能なアイテム領域の容量の上限は 100 GB ですが、"通常領域" と、"回復可能なアイテム領域" の使用容量を合算した合計値として 1.5TB まで拡張が可能です。
自動拡張アーカイブをメールボックス単位で有効にすると、初回の動作としてプライマリ メールボックスの回復可能なアイテム領域、アーカイブ メールボックスのクォーター値(通常領域と回復可能なアイテム領域)は、暫定的に 110 GB に拡張されます。
なお、自動拡張アーカイブを有効化する場合、Exchange Online Plan2 または、Exchange Online Plan1 + Exchange Online Archiving のライセンスを付与することで可能であることを確認してます。
また、自動拡張アーカイブを有効化する際の留意点についてもご紹介します
自動拡張機能の有効化に関する留意点
- 組織または特定ユーザーの自動拡張アーカイブを有効にした後で、追加のストレージが使用できるようになるまで最大で 30 日かかる場合があります。
- アーカイブ メールボックスの [プライマリ領域] もしくは [回復可能なアイテム領域] の使用容量が 90 GB を超過することで、初回の自動拡張がおこなわれます。
- 自動拡張アーカイブを有効にした後は、無効にすることはできません。
- 自動拡張アーカイブを有効にする前に、ユーザーのアーカイブ メールボックスを有効にする必要があります。
- 1日に 1GB 以上容量が増えるようなメールボックスはサポートされておりません。(自動拡張が動作するまでに容量の上限を超える可能性があります)
- 非アクティブなメールボックスとした場合、アーカイブ領域のアイテムをNew-MailboxRestoreRequest で復元することができないため、コンテンツの検索にて PST ファイルにエクスポートして移動する必要があります。
- 自動拡張可能な上限は、"通常領域" と、"回復可能なアイテム領域" の使用容量を合算して 1.5 TB までとなっております。
- 自動拡張アーカイブを有効化した場合、アーカイブメールボックスの削除済みアイテム内のフォルダを削除することができなくなります。
- 自動拡張アーカイブに保存されているメッセージにアクセスするには、ユーザーは次のいずれかの Outlook クライアントを使う必要があります。
・Outlook on the web
以下にユーザー単位で自動拡張アーカイブを有効化するコマンドレットをご案内いたします。
Exchange Online に接続してから実行してください。
特定のユーザーの自動拡張アーカイブを有効化する
<構文>
Enable-Mailbox <メールアドレス> -AutoExpandingArchive
<実行例>
Enable-Mailbox user@contoso.com -AutoExpandingArchive
設定を確認する場合は、以下のコマンドレットで可能でございます。
<実行例>
Get-Mailbox user@contoso.com | Select AutoExpandingArchiveEnabled
※ AutoExpandingArchiveEnabled が True であれば有効です。
なお、既に自動拡張アーカイブも有効化し、アーカイブメールボックスの拡張領域も上限に達した場合は、保持機能を無効化し、保持されているアイテムを削除するしかありません。
以下にご紹介したいと思います。
対処法 3. 回復可能なアイテム領域のアイテムを完全削除する
以下手順では、メールボックスに設定されている保持機能を無効化した後、回復可能なアイテム領域内に保持されているアイテムをすべて削除する手順となっております。
また、保持機能を有期限にすることで、保持期間を経過したアイテムだけを削除することもできます。
★保持期間を1年に変更した場合、受信日を起算日として1年経過した保持されているアイテムが削除されます。
また、保持されているアイテムが完全削除され、復元することが出来ませんので、事前にコンテンツの検索などにてアイテムバックアップのご取得をご検討ください。
1. メールボックスの保持を解除する
※訴訟ホールドで保持している場合の手順です。
※ Exchange Online に接続してから実行してください。
[構文]
Set-Mailbox -Identity <対象ユーザーのメール アドレス> -LitigationHoldEnabled $False
[実行例]
Set-Mailbox -Identity User001@contoso.com -LitigationHoldEnabled $False
<保持期間を変更する場合>
[構文]
Set-Mailbox -Identity <対象ユーザーのメール アドレス> -LitigationHoldDuration <指定する保持期間>
[実行例]
Set-Mailbox -Identity User001@contoso.com -LitigationHoldDuration 365
※ 保持期間を 1 年に変更する場合
2. [削除済みアイテムの回復可能期間] の設定期間を変更する
既定の設定ではユーザーがメールアイテムを削除済みアイテムフォルダーより削除すると、回復可能なアイテム領域配下の [削除済みアイテムを復元] フォルダー (Deletions) に格納され 14 日間経過後に完全削除される動作となります。
※ 訴訟ホールドが有効化されている場合は、14 日経過後も保持期間の間保持される動作となります。
本件では、一時的に削除済みアイテムの保存期間を 0 日に変更します。
[構文]
Set-Mailbox -Identity <対象メールアドレス> -RetainDeletedItemsFor <回復可能日数>
[実行例]
Set-Mailbox -Identity User01@contoso.com -RetainDeletedItemsFor 0
※ 既定の値に戻す場合は、RetainDeletedItemsFor を 14 で実行します。
3. 単一アイテムの回復を無効化する
単一アイテムの回復につきましては、ユーザーが削除済みアイテムフォルダーからさらに削除したメールを回復可能なアイテム領域配下の [削除済みアイテムを復元] フォルダー (Deletions) および Purges フォルダー に格納させる設定です。
本件では、一時的に単一アイテムの回復を無効化します。
※ 単一アイテムの回復を無効にし、削除済みアイテムの保存期間を 0 日に変更することで最も早く回復可能なアイテムフォルダーから完全削除することが可能です。
[構文]
Set-Mailbox -Identity <対象メールアドレス> -SingleItemRecoveryEnabled $False
[実行例]
Set-Mailbox -Identity User01@contoso.com -SingleItemRecoveryEnabled $False
※ 有効化する場合は、SingleItemRecoveryEnabled の値を $True で実行します。
4. 遅延保持を無効化する
訴訟ホールドなどの保持機能を無効に変更した際に、[管理フォルダーアシスタント] が走査したタイミングでDelayHoldApplied や DelayReleaseHoldApplied の属性 (遅延保持) が有効 (True) になり、保持機能を完全に無効化されない動作となることを確認してます。
これは、誤って保持機能の無効操作が行われた場合を考慮したパラメータになり、保持機能の無効化操作を行われた際、自動的に有効(True)になり、アイテムが自動削除されるのを防ぐ動作となります。
なお、自動的に有効化された後、30 日経過すると無効化される仕組みとなっております。
- 管理フォルダアシスタントを手動で走査させるコマンド
[構文]
Start-ManagedFolderAssistant -Identity <対象ユーザーのメールアドレス>
[実行例]
Start-ManagedFolderAssistant -Identity user001@contoso.com
一度のコマンドレットの実行では反映されない場合がございます。そのため数回(2 ~ 3 回)コマンドレットを実行していただきますようお願いいたします。
- 遅延保持パラメータの設定状況を確認する
[構文]
Get-Mailbox -Identity <対象ユーザーのメールアドレス> | select Displayname,DelayHoldApplied,DelayReleaseHoldApplied
[実行例]
Get-Mailbox -Identity user001@contoso.com | select Displayname,DelayHoldApplied,DelayReleaseHoldApplied
[結果表示例]
DisplayName DelayHoldApplied DelayReleaseHoldApplied
----------- ---------------- ----------------------
user001 True False
※ DelayHoldApplied、DelayReleaseHoldApplied の既定値は “False” となります。
※ DelayHoldApplied、DelayReleaseHoldApplied のいずれか、または両方が "True" となっていることを確認下さい。
- 下記のコマンドレットにて、True となっている遅延保持パラメータの無効化を行います。
◇ "DelayHoldApplied" パラメータの無効化
[実行例]
Set-Mailbox -Identity user001@contoso.com -RemoveDelayHoldApplied
◇ "DelayReleaseHoldApplied" パラメータの無効化
[実行例]
Set-Mailbox -Identity user001@contoso.com -RemoveDelayReleaseHoldApplied
- 実行結果確認
[構文]
Get-Mailbox -Identity <対象ユーザーのメールアドレス> | select Displayname,DelayHoldApplied,DelayReleaseHoldApplied
[実行例]
Get-Mailbox -Identity user001@contoso.com | select Displayname,DelayHoldApplied,DelayReleaseHoldApplied
[結果表示例]
DisplayName DelayHoldApplied DelayReleaseHoldApplied
----------- ---------------- ----------------------
user001 False False
※ DelayHoldApplied、DelayReleaseHoldApplied ともに False となったことを確認ください。
5. 管理フォルダアシスタントを走査させる
保持機能、および、遅延保持が無効の状態で [管理フォルダアシスタント] したタイミングで保持されたアイテムが削除される動作です。
アイテム数が多い場合は、削除が開始されるまでに数日かかる場合があります。
[構文]
Start-ManagedFolderAssistant -Identity <対象メールボックス>
[実行例]
Start-ManagedFolderAssistant -Identity User01@contoso.com
※ 1 回では処理がおこなれない場合がありますので、数回実施してください。
6. Get-MailboxStatistics にて回復可能なアイテムが削除されたか確認する
下記コマンドにて、対象メールボックスのプライマリメールボックスの使用容量を確認いたします。
プライマリ メールボックスの使用容量を確認するコマンド
[実行例]
Get-MailboxStatistics User01@contoso.com | FL TotalItemSize,TotalDeletedItemSize
[実行結果]
TotalItemSize : 通常領域の使用容量
TotalDeletedItemSize : 回復可能なアイテム領域の使用容量
<補足>
回復可能なアイテム領域のアイテムが削除されない場合は、以下のコマンドレットにて、設定が変更されているかご確認ください。
[実行例]
Get-Mailbox User01@contoso.com | Select LitigationHoldEnabled,RetainDeletedItemsFor,SingleItemRecoveryEnabled
以下の出力結果である場合は、設定は問題ございません。
[出力結果]
LitigationHoldEnabled : False
RetainDeletedItemsFor : 0:00:00
SingleItemRecoveryEnabled : False
7. 設定を元に戻す作業について
回復可能なアイテム領域の使用容量が減少し、事象が改善されましたら、変更した設定を元の状態に戻します。
※ DelayHoldApplied と DelayReleaseHoldApplied は有効化することができませんが、保持機能を有効化することで問題ございません。
◇ 1. 保持機能を有効化します。
[構文]
Set-Mailbox -Identity <対象ユーザーのメール アドレス> -LitigationHoldEnabled $True
[実行例]
Set-Mailbox -Identity User001@contoso.com -LitigationHoldEnabled $True
<訴訟ホールドの保持期間を変更した場合>
[構文]
Set-Mailbox -Identity <対象ユーザーのメール アドレス> -LitigationHoldDuration <指定する保持期間>
[実行例]
Set-Mailbox -Identity User001@contoso.com -LitigationHoldDuration Unlimited
※ 保持期間を無期限に変更する場合
◇ 2. RetainDeletedItemsFor を 14 日間へ変更する
[実行例]
Set-Mailbox -Identity User01@contoso.com -RetainDeletedItemsFor 14
3. SingleItemRecoveryEnabled を有効化する
[実行例]
Set-Mailbox -Identity User01@contoso.com -SingleItemRecoveryEnabled $True
また、保持機能を有効なままで回復可能なアイテム領域の重複したアイテムを削除する方法もありますので、以下の記事もご参照いただけますと幸いです。
回復可能なアイテム領域について以下に記事をまとめていますので参考としてくださいね。