
この記事でわかること
- 階層型アドレス帳でできること
- 設定に使えるグループの種類と上限(オブジェクト数・階層数)
- PowerShellでの設定手順(ルート組織の指定〜子階層の登録)
- 【追加Tips】表示順のカスタマイズ、一括登録の方法
Outlookのアドレス帳で、社員の一覧がアルファベット順や五十音順にずらっと並んでいるだけでは、目的の人を探すのに時間がかかることがあります。
階層型アドレス帳を使うと、Outlookクライアントのアドレス帳に組織図のような「組織」タブが追加され、部署の階層をたどりながら目的の人を探せるようになります。
階層型アドレス帳の概要
階層型アドレス帳とは、Exchange OnlineとOutlookクライアントの環境を拡張し、組織の階層構造をたどって特定の部署に属している人の中から目的の人を選択できるユーザーインターフェースを実現する機能です。
設定はPowerShellコマンドレットでのみ行うことができ、Exchange管理センターのGUIからは設定できません。
利用条件と上限
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 利用可能なグループ | 配布グループ、メールが有効なセキュリティグループ |
| Outlookクライアントのサポート対象 | Outlookクライアント(デスクトップ版)のみ。Outlook on the webでは利用できません。 |
| 1部署あたりの上限 | 部署数: 最大1,500 / ユーザー数: 最大1,500 / 合計: 最大2,000 |
| 最大階層数 | ルート組織(最上位)を1階層として、最大15階層まで |
動的配布グループは階層型アドレス帳には使用できません。必ず通常の配布グループ、またはメールが有効なセキュリティグループを使用してください。
※上記のオブジェクト数の上限は論理上の制限であり、実際にはこの数値を超えるオブジェクトを作成すること自体は可能です。
設定例) コントソ株式会社(1階層目、直下に2,000オブジェクト登録可能) → 営業本部(2階層目) → 第一営業(3階層目) → 営業一課・営業二課(4階層目、それぞれ直下に2,000オブジェクト登録可能)
なお、実務上は階層をあまり深くしすぎると管理が煩雑になりやすいため、3階層程度を目安に設計するのが運用上は扱いやすいとされています。
設定手順
手順1. メールが有効なセキュリティグループ(または配布グループ)を作成する
階層化する組織ごとにグループを作成します。
例) 1階層: Group1@contoso.com / 2階層: Group2@contoso.com / 3階層: Group3@contoso.com
手順2. 階層型アドレス帳のルート組織を指定する
PowerShellで以下のコマンドレットを実行し、階層型アドレス帳のルート組織(最上位の部署)を指定します。
あらかじめExchange Online PowerShellに接続してから実行してください。
<構文>Set-OrganizationConfig -HierarchicalAddressBookRoot <一番上の階層になるグループのメールアドレス>
<実行例>Set-OrganizationConfig -HierarchicalAddressBookRoot "Group1@contoso.com"
手順3. 階層型アドレス帳に表示させるグループを指定する
階層に含めるグループすべてに対して、以下のコマンドレットを実行します。
<構文>Set-Group -Identity <表示させるグループのメールアドレス> -IsHierarchicalGroup $true
<実行例>
Set-Group -Identity Group1@contoso.com -IsHierarchicalGroup $true Set-Group -Identity Group2@contoso.com -IsHierarchicalGroup $true Set-Group -Identity Group3@contoso.com -IsHierarchicalGroup $true
※下の階層に含めるグループもすべて指定してください。$falseのグループは階層型アドレス帳に表示されません。
手順4. 下の階層になるグループを指定する
以下のコマンドレットで、どのグループがどの階層の配下になるかを指定します。
<構文>Add-DistributionGroupMember -Identity <階層元のグループ> -Member <階層化するグループ>
<実行例>Add-DistributionGroupMember -Identity "Group1@contoso.com" -Member "Group2@contoso.com"
※Group1@contoso.com の下の階層に Group2@contoso.com を指定します。
さらに下の階層にグループを指定する場合は、上位階層となるグループのメンバーとして設定を続けます。
<実行例>Add-DistributionGroupMember -Identity "Group2@contoso.com" -Member "Group3@contoso.com"
※Group2@contoso.com の下の階層に Group3@contoso.com を指定します。
表示順のカスタマイズと一括登録
複数の子グループをまとめて登録したい場合
子グループが多い場合、Add-DistributionGroupMemberを1件ずつ実行する代わりに、Update-DistributionGroupMemberを使うと、指定したグループ一覧でメンバーをまとめて置き換えることができ、効率的です。
<実行例>Update-DistributionGroupMember -Identity Group1@contoso.com -Members Group2@contoso.com,Group3@contoso.com
※Update-DistributionGroupMemberは既存のメンバーをすべて指定した一覧で上書きする点にご注意ください。既存メンバーに追加したいだけの場合はAdd-DistributionGroupMemberを使用してください。
組織タブ内の表示順を変更したい場合
階層内でのグループの並び順は、既定では特に意図した順序になりません。表示順をコントロールしたい場合は、Set-Groupの-SeniorityIndexパラメーターで数値を指定します。数値が大きいグループほど上位に表示されます。
<実行例>
Set-Group -Identity Group2@contoso.com -SeniorityIndex 100 Set-Group -Identity Group3@contoso.com -SeniorityIndex 50
反映について
階層型アドレス帳の表示は、オフラインアドレス帳(OAB)が関連している可能性があり、反映まで最大48時間かかる場合があります。すぐに反映させたい場合は、以下のいずれかをお試しください。
- Outlookのプロファイルを再作成する
- Outlookの [アカウント設定] からExchangeキャッシュモードを一時的に解除する
設定が反映されると、Outlookクライアントの連絡先/アドレス帳画面に[組織] タブが表示されるようになります。
よくある質問
Q. 階層型アドレス帳を無効にしたい場合はどうすればいいですか?
A. 以下のコマンドレットでルート組織の指定を解除すると、階層型アドレス帳が無効になります。Set-OrganizationConfig -HierarchicalAddressBookRoot $null
Q. Outlook on the webでも表示できるようにしたいのですが。
A. 現時点で階層型アドレス帳はOutlookクライアント(デスクトップ版)専用の機能で、Outlook on the webには対応していません。
Q. 動的配布グループを使って階層を作ることはできますか?
A. できません。階層型アドレス帳に使用できるのは、通常の配布グループ、またはメールが有効なセキュリティグループのみです。
まとめ
階層型アドレス帳を設定する際は、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 使用できるのは配布グループ・メールが有効なセキュリティグループのみ(動的配布グループは不可)
- 対応はOutlookクライアント(デスクトップ版)のみ、Outlook on the webは非対応
Set-OrganizationConfigでルート組織を指定 → 各グループに-IsHierarchicalGroup $trueを設定 →Add-DistributionGroupMember(またはUpdate-DistributionGroupMember)で階層関係を登録、という3ステップで設定する- 表示順を調整したい場合は
-SeniorityIndexを活用する - 反映には最大48時間かかる場合があるため、急ぐ場合はプロファイル再作成やキャッシュモード解除を試す
部署数が多い組織では、階層型アドレス帳を導入することでOutlookのアドレス帳が格段に使いやすくなります。まずは自社の組織構造をどこまでの階層で表現するか(3階層程度が目安)を検討してみてください。